05 探りを入れてみる。

 スタッフに先回りさせて、密かに隠しカメラを仕掛けた個室。
 そこに、ボクと、花本サンと、道坂サンと、高橋クンの4人。
 さっきから、高橋クンがあのドッキリが行われていた部屋の前を通りかかった経緯を説明している。
 
『歌収録を終えて、うろうろしていた』と高橋クンは言った。
 ここに来る前に、こっそりスタッフに確認したところによると、確かに歌収録が行われていたらしい。
 
 ……ただし、矛盾点がある。
 
 歌収録が行われていたスタジオは、さっきドッキリが行われていた部屋よりも下のフロアにある。
 わざわざ、上のフロアをうろうろする理由はなんなのか。
 
 そう、理由はただ一つ。
『道坂サンを探すため』や。
 
 ……なんやねん、この二人。いったい、どういう関係なんや?
 高橋クンは、いったいどういうつもりで、道坂サンに近づいてんねん?
 
「……でも、高橋クンは勇敢やね。襲われてるのが道坂サンでも、ちゃんと助けるねんな」
「ちょっと、それどういう意味?」
「そりゃ、目の前で女性が襲われそうになってたら、誰だって助けるでしょ?」
「えぇー? 女性って誰? どこに?」
「あ、訂正。女性男性問わず、助けますよね?」
「た、高橋くんまでそんなこと言わないでよ!」
 
 不機嫌な顔をした道坂サンに向けた、高橋クンの表情。
 
『冗談だよ。僕は、ちゃんとキミのこと女性として見てるよ』
 ……そういう表情にしか、見えへん。
 
「あ、そうそう、さっきスタッフに聞いたんやけど」
 
 ボクは、いろいろさぐりをいれるため、仕入れたばかりの情報で話題を変えた。
 
「高橋クン、今日誕生日やねんて? いくつになったん?」
「そうなんですよ。28になりました」
「え? りょっ……高橋くん、誕生日なの?」
「うん。あれ、知らなかったんすか?」
「……知らなかった」
 
 ……道坂サン、知らへんかったん?
 どう見ても、これは他人に見せる演技ではなく、ホンマに知らへんかったって感じや。
 まだ、付き合いが短いってことか?
 
 でも、高橋クンの方は、『知らなかったのが意外』って感じやな。
 ……どういうこと?
 
「高橋クン、28やて? わっかいなぁ。ボクらなんて、もう40目前やで?」
「ええ? 見えないっすよ。30代半ばくらいかと思ってた」
「オレらもうおっさんやわ。なぁ、道坂サン?」
「私はおっさんじゃないわよ」
「ほな、おばはんや。いくつやったっけ? ボクらよりちょい下やったよな?」
「……37だけど」
「…………ええ!? 37!?」
 
 相当な驚きようやな、高橋クン。
 
「うん。あれ、高橋くん、知らなかった?」
「……知らなかった」
 
 あれ、こっちも。
 道坂サンが、さっきの高橋クンと同じように、『知らなかったのが意外』な表情。
 お互い、『知ってるもんだと思ってた』って感じ。
 
 普通に、芸能人同士として親しい程度なら、ここまでの反応はないと思う。
 ……やっぱり、この二人何かあるのは間違いない。
 
「いくつだと思ってたの?」
「うぅーん、漠然と30代くらい、としか」
「高橋クン、30代って、それ幅ありすぎやで」
「37って、30代やで、一応」
 
 高橋クンは、顎に手を当てて(クセなんかな?)何かを考えている。
 
「あ、ボク煙草吸ってきてええ?」
 
 ボクは、合図をするようにちょいちょいっと、隣の花本サンの背中をつついた。
 
「お、オレも」
 
 ボクと花本サンは、二人で個室を出た。
 道坂サンと高橋クンを二人にして、隣の部屋で隠しカメラの映像を見るために。
 
 
 
 
 

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